お子様用のお着物は、そのイベント(お宮参りや七五三など)が済んでしまうと着る機会がほぼないので、そのまま何十年としまったままになる場合が多いのですが、保管して状態を確認しないままの年月が長いということは、着物にシミ・カビ・変色などの変化が起きても、その変化に気づかないままということになりますので、いざ使おうと保管場所から出してみたら、濃い変色シミや全体的にカビの変色が出てしまっていた、ということも少なくありません。
祝い着は、化学繊維(アセテート)が使われていることがある
祝い着などのお子様用のお着物の古い変色したシミは、プロの染み抜き店でも断られてしまうことがあるぐらい、比較的染み抜きが難しい分類の着物なのですが、理由として、生地の組成や丈夫さの問題があります。
今ではあまりないのですが、3~40年前くらいは、祝い着などの着物の生地には、アセテートという化学繊維を使っていたことが多くありました。
表地が絹でも裏地や襦袢はアセテートというパターンも非常に多いパターンです。
このアセテートという素材は、見た目の艶や手触りが絹に近い(やはり違いはありますが)ということで、絹の代替品として使われ、人造絹糸(人絹)と呼ばれていました。
艶や手触りが絹に近いといっても、化学繊維であることには変わりがありませんので、薬品への耐性は、絹とは全く違うものになります。
薬品への耐性が違うということは、つまりは染み抜きで使える薬品に違いが出るということで、絹に使える染み抜き薬品が他の繊維の生地には使えないということは、常にあります。
また、絹の生地の祝い着であっても、大人用の着物と比べて生地が薄い場合が多く、生地の厚さは丈夫さと比例する部分があり、あまり無理が出来ないことが多いです。
今回お預かりさせていただいた祝い着は、絹の生地でしたので、絹に使う染み抜き薬品で染み抜きいたしました。
濃いシミはシミ抜き後に色修正が必須
かなり濃い変色シミだったのですが、変色シミは濃いほど残りやすく、このお品物のように薄い水色の地色は、染み抜きで容易に色が抜けてしまうので、染み抜き後の色修正が必要になります。
生地を傷めないように慎重に染み抜きし、シミが少し残ったので、色修正で出来る限り目立たなくいたしました。
しまったままのお宮参りや七五三の着物、カビやシミが出ていないか、一度点検されることをおすすめいたします。
【参考価格】画像部分のシミの染み抜き 20,000円程度(税別)
(※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)