着物に汗が付いた時の対処と解決法
着物は季節の変わり目に応じて装いを変える様式を持っておりますが、平均気温の上昇などで、着用時に年中汗をかく可能性が高くなっています。(なをし屋代表・栗田裕史は、今の時代はあまり衣替えにこだわる必要はないと思ってます)
着物でも洋服でも、汗をかいた後の始末は基本的には同じなのですが、洋服は洗えるものは洗濯をすればよいので、あまり気にしなくても良い部分があります。
着物は一部を除いて水を使ったお洗濯が出来ませんので、汗をかいた場合、何らかの処置を行う必要があります。
汗の99%は水とのことなので、普通に考えれば、そのまま乾かしてしまえば大丈夫なように思えるんですが、残り1%の身体から出た物質が、着物にとってはとんでもなく悪者となります。
長年仕舞っておいたお着物の衿や胸あたりが、黄色く変色していることがあります。
ご自身で経験されたことがある方もいらっしゃると思います。
あれらの原因は全て、汗の中の悪さをするたった1%の成分が残留していて、経年とともに生地と染色を変色させてしまった状態なんです。
軽度のものであれば、元に戻せますが、状態や色目によっては、元には戻せない場合もあり、非常にやっかいなシミとなります。
場合によっては、修復不可能の診断をさせていただくこともあります。
このような悲劇が起きないようにするには、どうしたら良いのか?
その解決法を今からお話させていただきたいと思います。
汗はクリーニング(丸洗い)で落ちるのか?
よくシーズンオフになると、お着物を仕舞う前に、丸洗い(クリーニング)を行った方が良いか?というお問い合わせをいただくのですが、このご質問は、半分正解で半分間違いです。
外気には、クルマの排気ガスや、ホコリ、近年なら黄砂などが浮遊しており、着物を着て外出されると、どうしてもそのような汚れが蓄積されていきます。
そのような汚れに対しては、クリーニングというのは非常に効果的なので、毎回着用後にする必要はありませんが、何回か着用されたら、クリーニングをされた方が、後々のメンテナンスの費用もかからないと思います。(当店では、お着物を拝見して、クリーニングの時期についても診断させていただきます。)
と、このように、メリットのある着物の丸洗い(クリーニング)ですが、完璧な物などありませんので、やはり苦手とする分野があります。
それは、「水性のシミや変色したシミについては、ほとんど効果がない」という事実です。
話を少し戻しますが、汗というのは、99%が水分です。残りの1%の悪者も、水分に含まれている状態ですので、
水性の成分となります。
とういうことは、つまり、「丸洗い・クリーニングだけでは、汗のシミは落とせない」ということになります。
では、汗をかいた後は一体どうしたら良いのか?ということになりますが、ご安心ください、ちゃんと効果的な方法があります。
それは、「汗抜き」という染み抜きの作業です。
汗をかいたら汗抜きという染み抜きが必要
汗抜きという作業は、お着物の汗をかかれた部分を、目で確認出来る部分はもちろんのこと、その他の目には見えなくても、経験則から汗の残留が予想される部分について、水を使って汗の残留成分を染み抜きする作業です。
この作業をきっちり行なっておけば、汗によるお着物の変色を、かなりの確率で防ぐことが出来ます。
皆さんがお着物のクリーニングを依頼されるお店は様々だと思いますが、一度、「汗抜きは出来るか?」と問い合わせてみてください。
きちんとした仕事をしているお店であれば、しっかりと対応してくれるはずです。
汗をかいた、汗をかいたように思うという場合は、まずは汗抜きという作業を依頼してみてください。
(当店の場合、変色を起こしていない汗ジミであれば、汗抜きは、3~6千円程度とお考えください。広範囲に汗をかかれた場合や、変色が起きてしまった場合はこの限りではありませんので、まずはお問い合わせくださいませ。)