着物の胴裏(裏地)にシミや黄ばみが出ていたら

染色補正師 栗田裕史

 

基本的にお着物の裏地である胴裏は、白い物が多い(羽裏などは除く)のですが、保管中の時間の経過と共に、いつの間にか広範囲の黄ばみ(黄変)や斑点状の変色シミが発生していることが比較的良くあります。

胴裏の黄ばみの状態には、三段階あります

黄ばみの状態には、大まかに分けて段階が三段階あります。

まず一つ目が、胴裏の全体的にうっすらと黄ばみが出ている状態。

絹は、元々真っ白ではなく、薄っすらと生成り色をした糸(もしくは生地)を精練(せいれん)というアルカリによる漂白作業を経て、皆さんがご存知の白さになります。

絹の白さは、いわば漂白して強制的に白くしている状態なので、時間の経過と共に、空気中の酸素と結合して、元の黄色みを帯びた色に戻っていこうとします。(酸化黄変)

この状態の場合は、見た目にはあまり良くありませんが、急激に表地に悪影響を与えることはありませんので、そのままにしておいても特に問題はありません。

現在流通している胴裏用の生地は、黄変防止加工を施してあることが多いとのことで、急激に黄ばむことはないようです。

二つ目は、斑点のような黄変が所々発生している状態。

胴裏黄ばみ
明らかにシミのような状態で、斑点のように胴裏にシミが発生している場合、元々の原因は、カビである可能性が非常に高いです。

おそらく、カビの発生直後は目に見えない状態だったのですが、時間の経過と共に、カビのシミが変化して生地を黄変させた状態です。

このような場合、カビの菌がまだ潜んでいる可能性もありますし、さらなる時間の経過と共に表地への悪影響も懸念されますので、出来れば、今すぐではなくても、胴裏を新しい物に取り替える方が良いと思います。

三つ目は、全体的に濃い黄色もしくは茶色に変色している状態です。

このような状態がなぜ起こるかと言いますと、ちょっと昔(今でもあるようですが)の胴裏の生地の中には、目方を重くするために、増量剤という一種の糊を含ませているものがあり、そのような生地の場合、その増量剤自体が激しく酸化黄変を起こし、生地自体も変色させてしまうのです。

しかもこの場合の変色は、かなりの確率で表地に悪影響を与えますので、こうなってしまっていたら、出来るだけ早く胴裏の交換をオススメします。

変色が裏地で留まっている間は生地の交換で解決するのですが、表地に影響を及ぼした場合、状態によっては元に戻せないこともあります。

しかも、増量剤によって変色している場合、染み抜きなどで濡らすと、黄ばみが表地に移りますし、汗をかかれても、表地に移ります。

そのままにしておくと、交換出来ない表地の着物本体に多大な悪影響を及ぼす恐れがある、非常に危険な状態です。

広範囲に黄ばんだ胴裏は、新しい胴裏に交換するのが一番良い

裏地の交換作業ですが、なをし屋での作業の場合、訪問着や小紋などの胴裏交換が、新しい裏地の生地代と胴裏の交換作業代で3万5千円ほどになります。
(縫製工賃と生糸の価格が急激に上がっているので、近々さらに値上げせざるを得ない可能性があります。)
(留袖・振袖などは、もう少し料金がかかりまして、4万円ほどになります。)

着物の胴裏交換や部分仕立て直しの料金

納期としては3ヶ月ほどいただきたいので、余裕を持ったご依頼をお願いいたします。

黄ばんだ胴裏をそのままにしておいて着物をダメにしてしまう前に、ぜひとも胴裏の交換をご検討ください。