洋服に何かのシミが付いた時、綺麗にするためにクリーニング店へシミ抜きに出すことはよくあることだと思います。

もちろん、それは間違いではありませんが、染み抜き屋の観点でお話すると、ちょっと覚えておいて欲しいことがあります。

シミは熱を加えると落ちなくなる場合がある

クリーニング店さんにシミ抜きを依頼すると、シミ抜きをしてクリーニングとアイロン仕上げ(プレス仕上げ)を行うのですが、クリーニング店さんはクリーニングが主な仕事ですので、シミが落ちても落ちなくても、クリーニングとアイロン仕上げをしてお客さんに衣類を返します。

ドライクリーニングによる洗いは、シミに特に変化は起こさないのですが、アイロン仕上げによる熱は、付いているシミをより落ちにくく変化させてしまうことがあります。

例えば、血液のシミ、食べこぼしのシミなど。

これらのシミに共通しているのは、タンパク質が含まれているということ。

タンパク質を含んだシミは、付いただけで何もしていない状態で早めにシミ抜きすれば綺麗に落とせる場合がほとんどなのですが、アイロン仕上げなどで熱がかかった場合、シミの中のタンパク質が固まってしまう(凝固)ので、そのように凝固してしまったタンパク質を落とすには、時間と手間をかけてタンパク質を分解してからシミ抜きする必要性が出てきます。

このタンパク質の凝固は、熱だけでなく何年も経った場合にも起こります。

そしてこの凝固したタンパク質のシミが厄介なのは、タンパク質を分解するシミ抜きを行っても、完全には落とせない場合もあるということです。

タンパク質を分解するには、専用の酵素という物を使って分解するのですが、この分解酵素はタンパク質であれば何でも溶かしてしまうので、例えばカシミヤなどの獣毛に使うと、生地そのものを溶かしてしまうリスクが伴います。

シルクも繊維の中にタンパク質が含まれているので、分解作用の強い酵素を安易に用いると、生地が薄くなったりする危険性があります。

以上のようなことから、食べこぼしや血液のシミが付いた物をクリーニング店さんにシミ抜きの依頼をする場合に、可能であればお店の方にぜひ伝えて欲しいことがあります。

それは、「染み抜きしてシミが落ちなかったら、洗いもアイロン仕上げもせずに返して欲しい」ということです。

これは何故かというと、 先にお話したように、タンパク質を含んだシミにアイロン仕上げで熱を加えてしまうと、凝固して非常に落ちにくいシミに変化してしまうので、シミが落ちなかった場合でも、別のお店でシミ抜きを依頼する場合にシミが落とせる可能性がぐっと上がるからです。

 

スーツジャケットのシミ 染み抜き・クリーニング前

 

こちらはスーツのジャケットに付いた食べこぼしのシミですが、ご依頼者様によると、クリーニング店にシミ抜きに出したけれども、シミは全く落ちずにクリーニングとアイロン仕上げだけされて返ってきたとのことでした。

食べこぼしのシミはタンパク質が含まれている可能性が高く、クリーニングでアイロン仕上げをされているので、場合によってはシミが残るかもしれないということを前もってお伝えしてお預かりさせいただきました。

 

スーツジャケットのシミ 染み抜き・クリーニング後

 

タンパク質の凝固が心配されましたが、何とか綺麗に落とすことが出来ました。

【参考価格】画像部分のシミ抜き 5,000円程度(税別)
※注※染み抜きは生地の素材・色合い、シミの濃さなどによって金額が変わってきます。あくまで一例の参考価格としてお考えください。クリーニングその他加工は別途料金がかかります。)

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