他店様の結果と診断に満足出来なかったら
なをし屋は着物クリーニングと染み抜きの専門店なのですが、「この着物のシミは古いので、染み抜きが出来ないと他店で断られてしまったのですが本当に直せないのでしょうか?」といったような藁にもすがるような思いのご相談や、他店様で染み抜きやクリーニングをされたものの、お品物の仕上がりにご納得されておられない方の、仕上がりや料金は妥当なのか?というようなご相談をいただくことも、近年は多くなってきました。
仕上がりに不満があっても、直接そのお店に言うのは難しい
もしそのお店の作業内容の説明やお品物の仕上がりの状態に納得されていなくても、なかなかその辺りを依頼されたお店に申し出るのはとても勇気がいることだと思います。
そこで、他店様との交渉事に直接関わることは出来ませんが、医療でよく言われる「セカンドオピニオン」のようなことは出来るのではないかと考え、あくまで可能な範囲においてとなるのですが、なをし屋ではそのような他店様とのやり取りでお困りだったり、着物クリーニングと染み抜きの専門店としての見解を聞きたいという方のご相談も承らせていただております。
例えば、他店様で直せないと断られたお品であれば、本当に直せない物なのか?を専門店として検証・診断して、当店で改めて染み抜きなどを承ることが出来ますし、もし生地の状態などの問題で通常の染み抜き作業などで直せない場合も、京都の職人の力を結集してでも何とかご着用に支障のない状態に直す修正方法を考えますし、他店様が行った作業の仕上がり品にご納得されていない場合であれば、当店でお手入れのやり直しを承らせていただくことも可能です。
ただ、必ずご理解いただきたいこともございまして、他店様での染み抜きなどの加工をされたお品は、その作業をした際に、どのような薬品を使われたり、どのような加工をされたかが全く分からないため、シミが付いただけの状態のシミの染み抜き作業に比べると、生地の劣化や染色の変化などが起きやすい、非常にリスクの高い作業になります。
また、他店様で行った染み抜きなどの加工による影響で、その部分の生地の繊維が弱ってしまい、既に加工に耐えられない状態に脆弱化している場合もあります。
このようなことから、事前にご説明した内容にご納得いただいた方だけですが、セカンドオピニオン的なことも承らせていただいておりますので、まずはお気軽に、なをし屋代表・栗田裕史までご相談くださればと思います。
他店様で断られたお品物をお引き受けする想いと信念
他店様で断られた着物や衣類、普通に考えれば、そんな手間のかかる物を引き受けるのは、正直言って経営的には何らメリットはありません。
手間賃仕事というものは、簡単な作業で済む仕事を数多くこなすのが一番儲かる仕事なのですから。
ですが、なをし屋では、ご依頼者様のお着物や衣類への想いも一緒に救うという信念のもと、他店様で断られてしまったお品物もお引き受けしています。
なをし屋代表の栗田裕史が、そのような信念を持つようになった理由には、一つの過去のエピソードがあります。
それは、とある結婚式場さんからのお問い合わせから始まった
あれは、まだ私がなをし屋を立ち上げて2,3年しか経っていない頃だったと思います。
店の電話が鳴り、ご相談をお伺いすると、とある結婚式場の方からのご相談でした。
「披露宴の時に、配膳の者が誤って赤ワインがたっぷり入ったデキャンタを倒してしまい、お客様のお着物にぶちまけてしまった」という悲痛なご相談でした。
さらに話をお聞きすると、「京都で一番と紹介された染み抜き職人に依頼したが、あまりにも手間がかかる仕事だし、染み抜き料金も高くつく。この着物はそれほど高価な着物じゃないから、お金で弁償した方が話が早い」と断られたそうです。
そこで、その結婚式場の担当の方は、着物の持ち主のお客様に、金額の弁償でご納得いただけないか?と話をされたのですが、そのお客様からこう言われたそうです。
「この着物は亡き父が買ってくれたとても思い入れの深い着物です。お金や新しい着物が欲しいのではありません。この着物を再び着られるようにして欲しいのです」と。
そこで困り果てた担当者の方が、なをし屋にご相談いただいたという経緯があったそうです。
お品物にはそれぞれにご依頼者様の想いがある
このお話を聞いた時に、私は仕事への情熱と共に、この仕事をしていることの運命や使命感のような物を強く感じました。
ご依頼いただくお品物には、ご依頼者様の想いがこもっている。
そんなお品物を救うことで、ご依頼者様の想いも救うことが、自分に課せられた使命ではないか?と。
それ以来、私は、他店様で断られてしまったお品物も、直せるかどうかを確かめるためにお預かりするようになったのです。
赤ワインを大量にかぶったお着物は、納品時に持ち主の方に直接お会いしていないので、感想は聞けなかったのですが、想いを救えたと今でも信じています。
大切にしたいお気持ちや深い想い入れがあるけれど、他店様で直せないと断られてしまったお品物。
他店様が匙を投げられた難しい修復ですので、絶対に直せるなんて無責任はことは申せませんが、諦めてしまう前に、まずはご相談いただければと思います。
一つでも多くの想いを救うために、小さな小さな店で、難易度の高いお品物と日々格闘している染み抜き職人が、京都にはおります。
なをし屋代表・染色補正師 栗田裕史