クリーニング屋さんの為の着物悉皆講座4

今回は、特殊品の品目別に、染み抜きと染色補正の専門店の代表として私が日々の実務で培ってきた、特殊品を受け付ける場合の注意点というかノウハウ全般を、分かりやすく公開していこうと思います。

私が定義する特殊品は、大きく分けて3つに分かれます。

まず、①着物や帯などの和装品(浴衣も含みます)、②洋服類全般(革製品は除く)、③バッグや小物類全般及び革製品全般の、3つに分けて考えます(品目の仕分けには色々な見方やノウハウがあると思いますが、私がお話させていただく上でのことですので、ご理解くださいませ)。

前置きが長くなりましたが、まずは、私の原点でもあり最も得意とする品目である、着物と帯などの和装品の受け付け時のポイントをお話させていただきます。

(着物などを全く取り扱ったことがない方にも理解していただくために、初歩的なことから解説していきますので、すでに着物類を扱っておられる方には物足りない内容になるかもしれませんが、今一度確認の意味も込めて読んでくだされば幸いです。)

いきなりですが、皆さんに質問です。着物を持ち込まれる方の多くは、どのようなことを気にされて依頼をされていると思われますか?

着用の目的があってタンスから出したらシミが付いていた、という場合もありますし、着用時にシミなどを付けてしまって、という場合もあります。ところが、これは私も開業してしばらくは分からなかったのですが、多くのお客様は、実は、着物のお手入れ方法を教えて欲しくて着物を持ち込まれるのです。

これにはいくつか理由があるのですが、その最たるものには、着物自体が日常で着るものでは無くなったために、以前は母から子といったように伝わっていた、着物のお手入れに関する知識が途絶えてしまっていることがあります。

そして、以前も書きましたが、悉皆屋さんの減少と共に、相談出来る場が無くなってしまっていることがあります。

普通に考えれば、呉服店さんなら相談にのってくれそうなものですが、呉服店さんは、長らく利幅の大きい販売に注力してきて、手間がかかって利幅の少ない悉皆の部門を軽視してきた歴史があります。

その結果、以前はお手入れに関する知識が豊富な店員さんがいたのですが、その技術の継承がなされずに、途絶えてしまったお店が多数を占めています。

また、消費者の多くは、呉服店に購入せずにお手入れの相談をすることに対して、心理的に高いハードルと、相談だけでは済まずに、高額品を買わされるのではないか?という不安があるようです。

このような理由から、着物などの和装品の特殊品を受け付ける場合、そのご依頼品に対しての具体的なアドバイスはもちろんのこと、不安や疑問を解決してあげることが、非常に重要なポイントとなります。

次回からは、実際にお着物を持ち込まれた際に必ず確認すべきポイントなどをお話させていただきたいと思います。

 

【別枠】「麻呂の毒吐き」

ボクがクリーニング業界の方と交流してから、今でも驚きというか理解に苦しむことがあります。それは、繁忙期という一番多く品物が集まる時期に、セールを行うお店が非常に多いことです。おそらく、他店よりも多くの品物を集めるための策なんでしょうけど、疑問に思うことはないのでしょうか?だって、旅館とかは繁忙期には通常の倍の料金とかになりますよね?それは、需要と供給におけるバランスからです。繁忙期だって、供給に対して需要が多いのに、どうしてあえてセールを行う必要があるのでしょうか?セールを行うということは、。1点辺りの単価が下がって、トータルの売り上げも減るということです。周りがやってるから・習慣で、という理由でセールをしているなら、今一度その意義を見直すべきではないかと思うのですが・・・。(ちなみに、当店はセールの類は一切行なっておりません)